72年にデビュー以来、根強いファンを持ち続ける彼女の、通算27枚目となる新作。フォーク~フォルクローレをイメージさせる曲調が多いが、打ち込みをメインに作っている曲もあり、ミュージシャンとして前向きな姿勢が窺える。 内容 (「CDジャーナル・レビュー」より) タイトル・ナンバーがなんとも悲しい。そりゃ、鳥は自分の人生なんて考えない。“眠るだけ 食べるだけ はばたくだけ”ですけどね。鳥じゃない僕が自分の人生を生きるということは辛く、苦いことなのだ、というテーマが実にしんみりと身にしみる歌だ。谷山浩子って、こんなに悲しかったっけ。岩男潤子に提供した曲を自分用に改作した(4)のようにほのぼのとした心暖まるラブ・ソングもあるが、全体に静謐な悲しさに満ちた曲が多いなぁ。聴いてる俺が悲しいのか作った谷山浩子が悲しいのか。ハメルンの笛吹きを連想させる(1)もそうだが、すべてが消失したあとの深い闇を感じさせるアルバムだ。昨日、コミックスの『ドラゴンヘッド』を読んだせいか、そんなネガティヴなイメージが連想されてならない。(5)や(8)のグロテスクでストレンジで妙に明るいファンタジーも暗闇の裏表か。「世紀末って結構明るくて楽しいウフフ…」と思える人には不必要なファンタジーだ。 (杉山達) --- 1999年11月号