
まごころ
このアルバムは、太田裕美のデビュー間もない頃に出されたファーストアルバムです。正直言って後年のアルバムで見られる、弾けた明るさがあるわけではなく、また「雨だれ」以外には際立った名曲が入っているわけでもありません。でも、このアルバムには決して彼女でなければ表現できないであろう、どこか微妙に、そして不安定に揺れ動く大人へ向かう少女の心が伝わってくるようです。 このアルバム全体の雰囲気はジャケット写真やメインの「雨だれ」の雰囲気とは異なり、意外にも明るい曲調のものが多いことがわかります。「夏の扉」や「ひとりごと」「幸福ゆき」など・・・。でも私が最も印象に残ったのはそれらの明るいナンバーではなく、ラスト近くの「白い季節」でした。やや暗い曲調の中で、少女の切ない思いが痛切に綴られていて、むしろこのアルバムを象徴しているように感じられたからです。 このアルバムの良さを具体的に表現することはいささか難しいのですが。たとえば八神純子の1stアルバム「思い出は美しすぎて」のように、時折、ふと振り返って聴くとその良さが感じられる、そんなアルバムだと言えるかもしれません。 あと、特筆すべきは彼女の自作曲「グレー&ブルー」です。この曲は恐らく彼女がアマチュア時代から暖めてきた、とっておきのナンバーだったのではなかったでしょうか。決してその他のナンバーに引けをとらないのはさすがだと思います。 (By ひろりん★ドリーム (兵庫県) )