KOKIA∞AKIKO ~balance~
企画アルバムを除けば「The Voice」以来となるKOKIAの新作です。 世界屈指の透明度を持つ、ヨーロッパ圏で現在活動中の、日本が誇る実力者が今作で表現する世界は、まさに宇宙的広がりを見せる音楽、そして無限の可能性を秘めた命の賛歌です。涙なしに語れない、想像を絶する「衝撃的」な内容になっています。 裏と表、光と影、静と動、和と洋、悲しみと喜びなど、∞の記号のごとくさまざまな二極を行ったり来たり駆け巡ります。 「KOKIA∞AKIKO~Blance」と「AKIKO∞KOKIA~Blance」二枚でようやく完成される音世界は、KOKIAの音楽史上初の試みであると同時に、 今作のためだけにトレードマークであったロングヘアーをばっさり切り落とした言うあたりから今作にかけた本気さがどれほどのものかを察することができます。 前作「The Voice」のあらゆる意味での完成度の高さに「次回作はThe Voiceをどう越えるのか?」と大きな期待を抱いていた人も少なからず居るのではないでしょうか?そんな期待にも今作で見事応えてくれました。 何といっても圧巻なのは、本当の意味で歌声一本のみで世界を渡り歩いている歌唱力、類まれなるソングライティングの才能、するどい感性がきらりと輝くアレンジの抜群のセンスの良さです。 思わず、絶句してしまうほど全て完成度が高いワンアンドオンリーの楽曲の数々は、人間の奥深くにある感情の弦に優しく、そして強く強く触れる表情豊かな楽曲郡です。 言葉では到底表現できない、アーティスト(芸術家)としての表現力やノンジャンルのすばらしさも遺憾なく発揮されています。全てが異なる歌い方で歌われており、一粒で12度おいしい作品です。 一曲一曲に工夫が施されており、どの曲もそれぞれに独立性を持たせてあるため、どこを切っても、どこで聴いても引き込まれる曲ばかりです。しかし、アルバムを大きくひとつの物語とみなしているため、曲順にもこだわりが見られ、それを正しく聴くことでそれぞれが相乗効果を生み出し、宇宙的な広がりを表現しています。後半のたたみかけるような怒涛の展開を是非一度味わってください。 一言一句、無駄な言葉がなく、歌詞の世界も非常に奥深く、哲学、心理学、文学、天文学、歴史学などさまざまな観点を織り交ぜつつ、これでもかと訴えかけてきます。 もちろんKOKIAの魅力の一つであるパターン化しないアルバム製作は今作でもみられ、過去のどの作品とも似通った点はなく、むしろ過去の全ての作品ともシンクロし深みを増します、このアルバムの真の魅力です。特に「KOKIA∞AKIKO~Blance」は「Remember Me」「The Voice」との相性がとてもよく、一緒に聴くことを非常にお勧めします。 こんにちの商業的な道具としての色が濃い「J-POP」という枠の中で、「音楽は何かを伝えるための一つの手段」として、あくまで世界に日本の文化、命の尊さを伝えようとする数少ない存在です。 独立してから「自由」を一人一人に訴える女性としてのしなやかさ、音楽に対する姿勢、情熱は賞賛に値するものだと思います。 今後もKOKIAの活動、KOKIAの才能から目を背けることができないような、そんなアルバムです。 LIVEのKOKIAと言われる所以である、Liveの場で このような壮大な楽曲郡が今後どのように主張してくるのか、非常に楽しみです。 販売形式が異なり、「KOKIA∞AKIKO~Blance」は通常通りの一般販売で、「AKIKO∞KOKIA~Blance」は配信限定またはオフィシャルホームページなどの特別販売になっています。 特に、「AKIKO∞KOKIA~Blance」はKOKIAにとっても、非常にパーソナルな作品であるが故で、リスナーにとっても大切な作品になって欲しいという願い、そして音楽をこよなく愛する彼女にとって、インディーズで活動するミュージシャンへのオマージュが込められています。 出会いと別れが混同するこの世の中で、是非この作品が一人でも多くの人にとっての出会いになって、希望を抱いて欲しいとアルバムを聴いて思いました。 「KOKIA∞AKIKO~Blance」 壮大なジャパニーズトラッドの音階と楽器で始まる「花宴」で壮大な幕が上がります。春の訪れの喜びと同時に別れの寂しさを表現した「うす桃色の季節」は涙を誘わせます。 「+sing」はKOKIAの代表曲「The Power of smile」「Dandelion」のように陽だまりのように優しい曲です。 癒し系KOKIAの世間のイメージを大きく脱線する「道化」と「Usaghi」は非常に力強く歌っています。「道化」は長年の封印から解き放たれた曲です。狂気にも似たアレンジと聞き手に訴えかける詞の世界は凄まじい破壊力です。 The Voiceの大名曲「il mare dei suoni」と姉妹曲と思われる「Usaghi」は、恐ろしいほどの緊張感漂う情熱的な作品です、津波のごとく攻めてきます。KOKIAの新境地です。 新しい決意の歌詞の素晴らしさと心をうつメロディが染み込んで、涙を誘わせる「夜明け~rebirth」は、Trip Tripの名曲「天使」に続く曲です。 音楽の起源、言葉の起源を表現したような古代文明を彷彿とさせる神秘的な「ゲマトリア」は、耳ではなくDNAに訴えてくるような作品で、大きな謎を含んだ歌詞、知的な言葉遊びが斬新で衝撃的な傑作です。「調和~oto」「Follow the nightingale」に並ぶ名曲と思います。 KOKIAの持てる才能全てでKOKIAという音楽を表現した大傑作「星屑のヴォカリーズ」は、KOKIA自身の大切な家族との永遠の別れの悲しみ、追悼の意が込めらています。今回のハイライトのひとつです。心して聴いてください。 全編Englishのみで歌われた「Life goes on」は、その歌詞のとおり「星屑のヴォカリーズ」に続く命の賛歌を歌った曲です。 アルバムに共通したテーマである、KOKIAはなぜ歌を歌うのか?というパーソナルな「戦火の花」は、地球上で起こっている悲しみを知って欲しいという想い、その悲しみと向き合う人たちに何もしてあげられなかったと言うもどかしさが綴られています。ぎっしり魂が込められており、涙を誘わせます。 このアルバムでは一番J-POPよりのなじみがある「この胸の苦しみが愛おしいほどに生きて」では、優しいメロディーと、ストレートな歌詞が音楽の深みを増す曲です。 今回のアルバムのコンセプトになっている「INFINITY」で壮大な幕を閉じます。このまま「AKIKO∞KOKIA~Blance」へとつながっていく様がわかります。同曲の別バージョンも収録されており、相乗効果を出しています。