ふざけんな世界、ふざけろよ
待ってろ、世界。「ふざけんな」は、愛の言葉だ。 とんでもなく殺気立ったメッセージを、あくまで陽気にぶっ放す表現の連発。「チクショーチクショーふざけんな」って、そんな歌詞有りですか?そんなこと歌う女性シンガー、今いますか?いていいんですか? 黒木渚、呆れるほどに完全独走状態の新曲「ふざけんな世界、ふざけろよ」。タイトル一発、つかみはOKだ。 ピアノロック、と言ってもいいかもしれない。のっけから目の覚めるような、鍵盤を引っぱたく強烈なフレーズ16ビートの力強いダンスビート。ギターとストリングスは控えめな背景で、リズムを前面に打ち出すフィジカルでグルーヴィーな曲。明るいメジャーコードのメロディに乗って、高らかに歌い上げる声の凛とした美しさ。ピアノアレンジならではの爽やかな疾走感が、激しい曲調を痛くは感じさせない。 それにしても。なんという歌詞。テロリズム、性悪女、腰抜け芸術家、会社のお局様、ぬるいマスメディア、手当たり次第に投げつける「ふざけんな」。ポップ・ミュージックに必要な体裁どころか、社会生活に必要な遠慮すらない、言葉の弾丸。普通に作れば、立派にやさぐれたパンク・チューンになるだろう。 そんな曲をとことん明るく、陽気に聴かせてしまうトリックは、「人生はコメディ」と言い切る彼女の哲学にある。駆け上がって転げ落ちて、シンプルなつもりがいつのまにかカオスになって、折れそうでも泣きそうでもきっと笑い話になる、それが人生。黒木渚にとって、「ふざけんな」は愛の言葉だ。